CRPSの後遺障害認定|RSDの3要件と7級・9級・12級・14級を弁護士が解説
はじめに
交通事故後にCRPS(複合性局所疼痛症候群)の症状が残った場合、後遺障害の認定を受けられるかどうかは、多くの方が不安に感じるポイントです。
この記事では、CRPSの後遺障害認定において重視される「RSDの3要件」や、問題となる後遺障害の等級(7級・9級・12級・14級)>について、交通事故を多く扱う弁護士の視点から解説します。
なお、CRPSの症状や検査、治療の基本については、交通事故後の燃えるような痛みはCRPS?で解説していますのでぜひご覧ください。
CRPSと後遺障害認定の関係
交交通事故後にCRPSの症状が残った場合、後遺障害等級の認定が問題になることがあります。
もっとも、医師からCRPSと診断されたとしても、それだけで自賠責保険の後遺障害が当然に認定されるわけではありません。
後遺障害等級の認定にあたっては、診断名そのものよりも、症状の内容や経過、検査所見などを踏まえた医学的な裏付けが重視されます。
なお、CRPSは、かつて神経損傷を伴わないタイプが「RSD(反射性交感神経性ジストロフィー)」、神経損傷を伴うタイプが「カウザルギー」と呼ばれていたものを包括する概念として整理されたものです。
現在の医学的な整理では、CRPSとして一括して扱われることが多くなっていますが、自賠責保険の実務や裁判例では、今も「RSD」という呼称とともに後遺障害の判断基準が論じられることが多いため、本記事でも実務上の表記に合わせて「RSD・CRPS」と記載しています。
医学的なCRPS診断と後遺障害認定は同じではない
CRPSの医学的な診断基準と、自賠責保険における後遺障害の認定基準は、それぞれ別の目的で作られた別のものです。
医学的な診断基準は、あくまで医師が治療方針を検討するために病態を判断するための基準です。
これに対して、後遺障害の認定は、交通事故による症状が労働能力にどの程度の影響を与えているかという観点から、後遺障害等級ごとに定められた基準に当てはめて判断されます。
そのため、主治医がCRPSやRSDと診断していても、その診断がそのまま自賠責保険における後遺障害等級の認定に直結するわけではないという点をまず押さえておく必要があります。
自賠責実務で重視されるRSDの3要件
自賠責保険の実務では、CRPS・RSDによる後遺障害を検討するにあたり、次の3つの所見(いわゆる「3要件」)が重視される傾向にあります。
関節拘縮
関節の可動域が制限され、動かしにくい状態が続いていることをいいます。
関節可動域の測定結果が、後遺障害の判断において重要な資料となります。
骨萎縮
レントゲン検査などにより、患部の骨密度が低下している所見が確認されることをいいます。
健側(けがをしていない側)と比較して骨萎縮がみられるかどうかが確認されます。
皮膚変化
皮膚の色調の変化、皮膚温の左右差、発汗異常、皮膚の萎縮や光沢の変化などをいいます。
写真や検査結果によって、経過とともに変化が記録されていることが重要になります。
特に、9級以上の重い後遺障害等級を認定する場面では、これら3つの所見がそろっているかどうかが厳格に確認される傾向にあります。
3要件を満たす場合に問題となる等級
RSD・CRPSとして関節拘縮・骨萎縮・皮膚変化の3要件が認められる場合には、症状の程度や労働能力への影響に応じて、主に次の等級が問題になります。
7級4号
神経系統の機能または精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができない場合です。
CRPSによる痛みや機能障害が非常に強く、通常の労働に大きな制限が生じているケースで問題になります。
9級10号
神経系統の機能または精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限される場合です。
通常の労務に就くこと自体は可能でも、疼痛や機能障害により従事できる仕事内容や作業量が相当程度制限される場合に問題になります。
12級13号
局部に頑固な神経症状を残す場合です。
RSD・CRPSとして3要件が認められるものの、労働能力への影響が7級・9級ほど重いとまではいえない場合に問題になることがあります。
このように、3要件を満たす場合であっても、直ちに特定の等級が認定されるわけではありません。
症状の重さ、関節可動域制限の程度、骨萎縮や皮膚変化の程度、治療経過、日常生活や仕事への支障を総合して、具体的な等級が判断されます。
3要件を満たさない場合でも12級・14級の余地がある
もっとも、関節拘縮・骨萎縮・皮膚変化の3要件がそろわない場合でも、すべての後遺障害が否定されるわけではありません。
RSD・CRPSとして7級・9級などの上位等級が認められない場合でも、痛みやしびれなどの神経症状として、12級13号や14級9号が問題になることがあります。
12級13号は、画像所見や神経学的所見、治療経過などから、痛みやしびれが医学的に説明できる場合に問題になります。
14級9号は、明確な画像所見が乏しい場合でも、事故直後から症状が一貫して続いており、治療経過から神経症状の残存が説明できる場合に問題になります。
したがって、RSD・CRPSとしての3要件が十分でない場合でも、神経症状として後遺障害評価を受けられる可能性がないかを検討することが重要です。
関節機能障害として評価される場合
CRPSによって関節の可動域制限が強く残っている場合には、神経症状としてだけでなく、関節の機能障害として評価される余地がないかも検討する必要があります。
関節可動域の測定結果や画像所見などをもとに、神経症状の等級と関節機能障害の等級のどちらで評価すべきか、あるいは両方の観点から検討すべきかは、個別の事情によって異なります。
CRPSをめぐる裁判実務の考え方
医師の診断がそのまま採用されるとは限らない
裁判実務上、主治医がRSD・CRPSと診断していても、自賠責保険においてRSD・CRPSとして認定されていない場合には、裁判所がその診断をそのまま採用しない傾向がみられます。
裁判所は、診断名だけでなく、症状の経過、検査所見、治療内容など、事案ごとの具体的な事情を踏まえて判断する傾向にあります。
日本版CRPS判定指標は後遺障害認定基準ではない
国内で用いられるCRPSの判定指標は、あくまで医師が診療のために用いる医学的な指標であり、自賠責保険や裁判所における後遺障害の認定基準そのものではありません。
そのため、判定指標を満たしているという事実だけをもって、当然に特定の等級が認定されるわけではないという点には注意が必要です。
神経症状として評価される裁判例がある
RSD・CRPSとしての3要件が十分に認められない事案でも、事故との因果関係や症状の一貫性が認められる場合には、神経症状として12級13号や14級9号相当の後遺障害が認められることがあります。
非該当・低い等級になった場合の対応
後遺障害の申請の結果、非該当となった場合や、想定より低い等級にとどまった場合でも、それで終わりというわけではありません。
まずは、認定結果に付された理由を確認し、どのような点が不足していると判断されたのかを把握することが重要です。
そのうえで、不足している医学的資料(検査結果、症状経過の記録、日常生活への支障に関する資料など)を補ったうえで、異議申立てを行うことが考えられます。
場合によっては、異議申立てだけでなく、訴訟の中で後遺障害の有無や等級を争うことも選択肢となります。
弁護士に相談すべきタイミング
CRPSは症状が長期化しやすく、後遺障害の認定においても専門的な判断が必要となる分野です。
次のような場面では、早めに弁護士に相談することをおすすめします。
- 保険会社から治療費打切りを打診されたとき
- 後遺障害の申請を検討し始めたとき
- 後遺障害等級の認定結果に納得できないとき
- 非該当となってしまったとき
特に、後遺障害の申請前から弁護士に相談することで、必要な検査や資料をあらかじめ整理しておくことができ、適正な等級認定につながりやすくなります。
保険会社から治療費打切りを言われた場合
CRPS・RSDの後遺障害認定では、関節拘縮・骨萎縮・皮膚変化という3要件が重要な判断要素となり、これらが認められる場合には7級・9級・12級が、認められない場合でも神経症状として12級13号・14級9号が問題になることがあります。
もっとも、医師からCRPSと診断されたことと、自賠責保険で後遺障害が認定されることは、必ずしもイコールではありません。
適正な後遺障害認定を受けるためには、症状の経過や検査結果を丁寧に整理し、専門的な観点から準備を進めていくことが大切です。
CRPSの症状や検査、治療の基本については交通事故後の燃えるような痛みはCRPS?症状・検査・治療を弁護士が解説にて詳しく解説しておりますので、ぜひご覧ください。
CRPSの後遺障害認定でお悩みの方は、交通事故に詳しい弁護士への相談をご検討ください。




