ADRとは
ADRとは
ADR(裁判外紛争解決手続)とは、訴訟手続によらずに紛争を解決するため、公正な第三者が関与してその解決を図る手続のことです。
交通事故のADRを行う代表的な機関としては、①交通事故紛争処理センターと②日弁連交通事故相談センターがあります。(なお、民事調停もADRといえますが、分けて説明します)
交通事故紛争処理センター
まず、①交通事故紛争処理センターでは、自動車事故(原動付自転車を含みます)の被害者と加害者が契約する保険会社等の示談をめぐる紛争を解決するため、同センターの相談担当弁護士等が双方の間に立って法律相談、和解あっせん及び審査の手続きを行なっています。
相談料等は基本的に無料で、窓口が全国11か所に設置されています。
同センターの和解あっせんが不調となり、審査手続きの申立てがなされた場合、その裁定には、保険会社側のみを拘束する効力(片面的拘束力)があります。
そのため、被害者側のみ裁定に不服がある場合、その後、調停や訴訟により解決を図ることができます。
日弁連交通事故相談センター
次に、②日弁連交通事故相談センターでは、損害賠償の交渉で相手方と話し合いがまとまらない場合において、同センターの担当弁護士が公平・中立的な立場から示談成立の助けを行います。
相談料等は基本的に無料で、窓口が全国157か所、示談あっせん開催場所が全国46か所に設置されています。
同センターでも示談あっせんが不調となった場合、審査手続きの申立てができますが、審査が可能なのは相手方が特定の共済である場合のみであり、相手方が損害保険会社である場合には審査請求を行えません。
なお、審査請求に対する審査結果に、共済側のみを拘束する効力があり、被害者側に有利な作りとなっている点は①交通事故紛争処理センターの裁定と同様です。
そのため、被害者側のみ審査結果に不服があるとして、その後、調停や訴訟により解決を図ることができます。
同センターでの示談あっせん期日は、原則として3回に限られており、交通事故紛争処理センターの和解あっせんや訴訟手続きよりも迅速な解決を図れる可能性が高いです。
共通点
交通事故紛争処理センターと日弁連交通事故相談センターのいずれのADRも無料で利用できる点や訴訟よりも比較的時間がかからない点が共通しています。
いずれの手続きを利用すべきかについては、以下の点を踏まえて、選択することが考えられます
- 場所 ※①は設置場所が限られている
- 迅速性 ※争点が少なければ②の方がより迅速である
- 片面的拘束力 ※②は相手方が損害保険会社では審査請求ができない場合がある